【業(ごう)】

海を見下ろす崖に立ち
狂人は海を見ていた
疲れ切った魂達が
肩を落として行くのが見えた

彼らを濡らすこの雨が
救いの雨であればいい
幾百幾千幾万の
優しい雨であればいい

苦しむための生ではないと
暗い波間に漂っている
数え切れない白い影

いつまでそこにいるのだろうか
現れなかった誰かを待って
いつまでそこで待つのだろうか
来るはずのない誰かが来るのを

それがあまりに切なくて
それがあまりに哀しくて
言葉にできないその苦しみを
天に向かって解き放とうと
狂人は叫び続けた
血を吐くように
狂人は叫び続けた

海を見下ろす崖の上から
狂人は身を踊らせた
とても綺麗な白い翼が
暗い海へと舞うのが見えた

海を見ていたあの狂人が
白い影の一つになったか
彼らを天に解き放ったか
僕はまだ
その答えを出せないでいる

海を見下ろす崖に立ち
今は僕が海を見ている
僕にはまだ
白い波しか見えてこない


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